第24回 一部工作物の石綿(アスベスト)事前調査での資格取得必須化について(令和8年1月施行予定)

前回は少しアスベスト訴訟にふれたので、今回は石綿(アスベスト)事前調査について解説したいと思います。
まず背景として、令和2年2月に厚労省で有識者による会議(ワーキンググループ)が行われ、以下のとおり、石綿事前調査の見直しの必要性が指摘されています。

1 石綿の事前調査
(現状と課題)
1)(…中略…)事前調査は、「石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者」が行うよう示し、通知において、(…中略…)例示してきたが、調査を行う者の要件を明確に示していない。また、石綿含有建材の事前調査に関する知見、ノウハウ等の集積等により、適切な事前調査のためには、石綿に関し一定の知見等を有する者が行うことが従前以上に求められている
(…中略…)
2) 解体業者が4万社を数え、今後石綿含有建築物の解体が増加することが見込まれる中、(…中略…)解体業者の約4割に石綿作業主任者技能講習修了者が不在との調査結果があるなど、解体業者は必ずしも十分な調査能力を有する者を確保していない状況にあると考えられる。
3) 事前調査の方法(範囲)についても、(…中略…)必ずしも、石綿則第3条の調査として行うべき具体的方法(範囲)は示されていない。
4) このような中、「アスベスト対策に関する行政評価・監視」(平成28 年5月総務省。以下「総務省勧告」という。)において、石綿含有建材の調査が不十分で必要な措置を講じずに解体等が行われている事例が示されるなど、適切な事前調査の徹底が必要な状況が見られ、問題事案の発生の要因には、①事前調査者の建築物や石綿建材に関する知識不足、②調査を行うべき方法に関する認識不足などが挙げられている。
また、総務省勧告では、工事関係者間で事前調査結果に関する情報等が適切に共有されず、適切なアスベスト飛散・ばく露防止措置が講じられないまま解体等工事が進められた事例も複数指摘されている。

出典:厚労省HP「第1回建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会 工作物に関するワーキンググループ」の参考資料1「石綿対策見直しの議論の背景」P1,2より一部抜粋

つまり、事前調査者の要件や調査の具体的な内容が明確でなく、必要な措置が講じられずに解体等工事が行われるなどの問題事例も生じていました。
そしてこの状況の改善に向けて、ワーキンググループは第6回(令和4年10月)に報告書案を示し、これが今回の法令改正につながりました。

その法令改正の内容は、以下の資料をご覧ください。

出典:厚生労働省HP「石綿総合情報ポータルサイト」(以下、「厚労省ポータル」)の「2.リーフレット・動画等」の「令和8年(2026年)1月1 日以降着工の工事から、一部の工作物の石綿事前調査には資格取得が必要になります!」より引用し、一部加工して作成

上記は「工作物」に関する法改正ですが、「建築物」に関してはもともと有資格者による事前調査が求められており、その事前調査結果の報告や保存も必要です。

出典:厚労省ポータルの「石綿(アスベスト)の事前調査は施工業者(元請事業者)が必ず行う必要があります!」より引用

そのほか、上記に記載はないのですが、元請業者は発注者に対して書面により事前調査の結果等を報告することが義務付けられています。国作成のマニュアルにある報告書の例は以下のとおりです。

出典:環境省HP「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び 石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」P99より引用

次に、工作物石綿事前調査者になるための講習について紹介します。

まず、受講資格については以下のとおりです。

①(…中略…)石綿作業主任者技能講習を修了した者
②学校教育法による大学(短期大学を除く。)において、工学に関する正規の課程又はこれに相当する課程を修めて卒業した後、工作物に関して2年以上の実務の経験を有する者
(…③及び④(短期大学関連)は省略…)
⑤学校教育法による高等学校又は中等教育学校において、工学に関する正規の課程又はこれに相当する課程を修めて卒業した後、工作物に関して7年以上の実務の経験を有する者
⑥工作物に関して11年以上の実務の経験を有する者
(…以下、略)


出典:厚労省ポータルの「工作物石綿事前調査者講習」より一部抜粋して作成

また、下記科目の講義(合計11時間)と筆記試験があります。
・工作物石綿事前調査に関する基礎知識 1・2(各1時間)
・石綿使用に係る工作物図面調査(4時間)
・現場調査の実際と留意点(4時間)
・工作物石綿事前調査報告書の作成(1時間)

なお、具体的な講習受講機関については、厚労省ポータルの【工作物石綿事前調査者】の【登録講習機関一覧】をご覧ください。

以上が、一部工作物の石綿(アスベスト)事前調査での資格取得必須化について(令和8年1月施行予定)の概要とその注意点です。少しでも参考になれば幸いです。

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