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今回は「著しく短い」工期の禁止について解説します。
簡単にまとめると、ポイントは以下の2つです。
➀注文者だけでなく、受注者の建設業者に対しても「著しく短い工期」を禁止(令和7年12月までに施行予定)。
➁建設業者に対して、工期等に影響を及ぼすおそれがあるときに、注文者への「通知」を義務付け(令和6年12月施行済み)
まず、①について法律と国の資料を見てみましょう。
建設業法
(著しく短い工期の禁止)(※令和7年12月までに施行が予定されているのは第2項の新設)
第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
2 建設業者は、その請け負う建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
出典:東北地方整備局作成「建設業における働き方改革と工期の適正化について」(以下、「東北地方整備局資料」)P24より一部抜粋し、加工して作成
「工期ダンピング」というのは、通常必要と認められる期間に比べて、「著しく短い期間」を工期とする請負契約を締結することです。現状は注文者のみに禁止されていますが、令和7年12月までに施行の改正により、受注者である建設業者も禁止されます。
次に、②について法律と通知書様式をご覧ください。
建設業法
(工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の通知等)
※令和6年12月施行済み(第1項の「通知」への改正と第2~4項の新設)
第二十条の二 建設工事の注文者は、当該建設工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、建設業者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。
2 建設業者は、その請け負う建設工事について、主要な資材の供給の著しい減少、資材の価格の高騰その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、国土交通省令で定めるところにより、注文者に対して、その旨を当該事象の状況の把握のため必要な情報と併せて通知しなければならない。
3、4 (略)
出典:大阪府作成の通知書様式(建設業法第20条の2第2項)
このように、工期に影響を及ぼすおそれのある事象が発生した場合には、注文者だけでなく、建設業者にも「通知」の義務が生じることになりました。なお、この改正は令和6年12月に施行済みです。
また、「著しく短い」工期の禁止が設けられた趣旨は、長時間労働の是正による担い手確保です。つまり、適正な工期を設定することで長時間労働を防止し、働きやすい環境を確保することが目的です。
そのため、上限規制を超える違法な長時間労働は労働基準法違反となるだけでなく、たとえ合意があったとしても「著しく短い工期」と判断されることになります。
以下の国の資料をご参照ください。
出典:東北地方整備局資料P14より一部抜粋し、加工して作成
「工期に関する基準」
第1章(4)本基準の趣旨
(…中略…)
なお、著しく短い工期の疑義がある場合には、本基準を踏まえるとともに、 過去の同種類似工事の実績との比較や建設業者が行った工期の見積りの内容の精査などを行い、許可行政庁が工事ごとに個別に判断する。
(以下、略)
出典:中央建設業審議会決定「工期に関する基準」P8より一部引用し、加工して作成
このように、「著しく短い」工期かどうかは、「工期に関する基準」をもとに、過去の同種事案や見積書の内容をもとに判断されることになります。
この「工期に関する基準」については、令和6年3月に改正がありました。
その内容は以下のとおりです。
出典:関東地方整備局「建設業の働き方改革に向けた取り組み」P7より引用し、一部加工して作成
出典:中央建設業審議会決定「工期に関する基準」P16より一部抜粋し、加工して作成
先ほど述べた時間外労働を遵守できる工期設定のほかに、特筆すべき点として、「猛暑日」の不稼働が盛り込まれています。
昨年の大阪市の「真夏日」(※最高気温30℃以上の日で「猛暑日」とは別)の日数は、過去最多の95日となりました。
以前にとりあげたように今年6月から企業での熱中症対策が義務化されるなど、猛暑を前提とした対策が求められており、「猛暑日」の不稼働設定もそのような背景があると思われます。
さて、話を戻すと、「著しく短い」工期の禁止には、実効性を担保するため、違反した場合の措置や、違反する疑いがあった場合の通報窓口(駆け込みホットライン)も設けられています。
以下の国の資料をご覧ください。
出典:東北地方整備局資料P16より一部抜粋し、加工して作成
出典:国土交通省作成「建設工事における適正な工期の確保に向けて」P15より一部抜粋し、加工して作成
以上が、建設業と労務⑤(建設業者にも「著しく短い」工期を禁止【令和7年12月までに施行予定】などについて)の概要とその注意点です。少しでも参考になれば幸いです。
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