第25回 一括下請負(丸投げ)の原則禁止について

前回までは安衛法の話題が続いていたのですが、今回は一括下請負(丸投げ)の原則禁止について解説したいと思います。まずは法令をご覧ください。

建設業法
(一括下請負の禁止)
第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
3 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
4 (略)

建設業法施行令
(一括下請負の禁止の対象となる多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事)
第六条の三 法第二十二条第三項の政令で定める重要な建設工事は、共同住宅を新築する建設工事とする。

公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律
(一括下請負の禁止)
第十四条 公共工事については、建設業法第二十二条第三項の規定は、適用しない。

このように、一括下請負は、請け負わせることも請け負うことも原則禁止されています。
例外として発注者の書面による承諾がある場合は、共同住宅の新築工事と公共工事を除き、可能となります。このように原則禁止とした趣旨は、一括下請負は発注者が受注者に寄せた信頼(資力や施工実績など)を裏切ることになるほか、中間搾取、工事の質の低下、施工の責任の不明確化、ブローカーの発生などの問題が生じる恐れが大きいからです。

では、具体的にどのような行為が「一括下請負」にあたるのでしょうか。
それについては、以下の国の通知をご覧ください。

(1)建設業者は、その請け負った建設工事の完成について誠実に履行することが必要です。したがって、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、以下の場合に該当するときは、一括下請負に該当します。
① 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
② 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

(…中略)

(3)一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事一件ごとに行い、建設工事一件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます。

(注1)「その主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、下請負に付された建設工事の質及び量を勘案して個別の建設工事ごとに判断しなければなりませんが、例えば、本体工事のすべてを一業者に下請負させ、附帯工事のみを自ら又は他の下請負人が施工する場合や、本体工事の大部分を一業者に下請負させ、本体工事のうち主要でない一部分を自ら又は他の下請負人が施工する場合などが典型的なものです。
(具体的事例)
① 建築物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを1社に下請負させ、電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合
② 戸建住宅の新築工事において、建具工事以外のすべての建設工事を1社に下請負させ、建具工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合

(注2)「請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、次の(具体的事例)の①及び②のような場合をいいます。
(具体的事例)
① 戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の建設工事を一社に下請負させる場合
② 道路改修工事2キロメートルを請け負い、そのうちの500メートル分について施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その建設工事を1社に下請負させる場合


出典:国土交通省通知(平成28年10月14日国土建第275号)「一括下請負の禁止について」(以下、「国通知」)二(1)、(3)より一部抜粋

特に緑色部分の「独立してその機能を発揮する工作物」についても対象となる点は、注意が必要です。

また、どのような場合に「実質的に関与」がなく一括下請負とされるのか、逆に言うと、どのような役割を元請や下請けが果たしていればよいのかについては、以下の国の資料が参考になります。

出典:国交省HPにて掲載の「別紙1(一括下請負の禁止について)」

そして大切なのは、このうちどれかを行えばよいのではなく、すべて行う必要があるということです。
なお、建設業者は監理技術者又は主任技術者を置く必要がありますが、単に現場に技術者を置いているだけでは上記の事項を行ったことにはならないため、注意が必要です。

そのほかに重要な留意点として、以下の点が挙げられます。

三 一括下請負に対する発注者の承諾
民間工事(共同住宅を新築する建設工事を除く。)の場合、元請負人があらかじめ発注者から一括下請負に付することについて書面による承諾を得ている場合は、一括下請負の禁止の例外とされていますが、次のことに注意してください。
建設工事の最初の注文者である発注者の承諾が必要です。発注者の承諾は、一括下請負に付する以前に書面により受けなければなりません。
② 発注者の承諾を受けなければならない者は、請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせようとする元請負人です。したがって、下請負人が請け負った建設工事を一括して再下請負に付そうとする場合にも、発注者の書面による承諾を受けなければなりません。当該下請負人に建設工事を注文した元請負人の承諾ではないことに注意してください。


出典:国通知の三より一部抜粋

このように、元請と下請の間の契約においても発注者による書面承諾が必要なのですが、それは、下請けはあくまで元請の「履行補助者」という立場(最高裁判例の考え方)にあるという考え方が背景にあるからです。

その他、以下の点にも注意が必要です。
・発注者からの請負金額と同額で、元請から下請負に出す場合でも違法(Q1)
・資材提供だけでは実質的に関与していることにはならない(Q4)
・連結子会社でも、一括下請負に該当する場合がある(Q9)
詳しくは、以下のQAをご覧ください。

Q1 施主から500万円で地盤改良工事を請け負いましたが、都合により自ら施工することができなくなったため、利益はもちろん経費も一切差し引かずに、A社に500万円でこの建設工事の全部を下請負させました。この場合でも建設業法第22条に違反することになるのですか。


A 建設業法が一括下請負を禁止しているのは、発注者は契約の相手方である建設業者の施工能力等を信頼して契約を締結するものであり、当該契約に係る建設工事を実質的に下請負人に施工させることはこの信頼関係を損なうことになることから、発注者保護という観点からこれを禁止しているのであって、中間搾取の有無は一括下請負であるか否かの判断においては考慮されません。 したがって、本件のように請け負った建設工事をそっくりそのまま下請負させれば、元請負人が一切利潤を得ていなくても一括下請負に該当します。

Q4 道路改修工事に関して、その建設工事の全部をA社1社に下請負させましたが、建設工事に必要な資材を元請負人としてA社に提供しています。この場合も一括下請負になるのでしょうか。


適正な品質の資材を調達することは、施工管理の一環である品質管理の一つではありますが、これだけを行っても、元請負人としてその施工に実質的に関与しているとはいえず、一括下請負に該当することになります。

Q9 地盤改良整備を含む道路改良工事を請け負いましたが、当該地盤改良には、特別な工法が要求されるため、地盤改良技術を持つ子会社に実際の建設工事を行わせました。このような分社化は経営効率化の要請によるものであり、また、子会社とは連結関係にあることからも一括下請負に該当しないと考えますが如何でしょうか。


連結関係の子会社であるとしても、実際の建設工事を一括して他社に行わせた場合、別々の会社である以上、一括下請負に当たります。このように親会社が自ら実質的な業務を行わない場合には、親会社を介さず直接子会社に請け負わせることが適当です。


出典:国交省HPにて掲載の別紙3「一括下請負に関するQ&A」

以上が、一括下請負(丸投げ)の原則禁止の概要とその注意点です。少しでも参考になれば幸いです。

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