第17回 財産的要件って何?

ここで、建設業の許可の要件のうち、どこまで解説してきたかを整理します。
大阪府作成の「建設業許可の手引き」(以下、「手引き」)では以下のように記載されています。

これまでは、「1」、「1-2」、「2」を解説してきました。そこで今回は「3」の「財産的要件」を解説します。

手引きP1―5(引用し一部加工・抜粋)
5 建設業の許可の要件等
建設業の許可を受けるためには、以下の要件を全て満たすことが必要です。
下記1~5 全ての要件を満たしていることを確認した後に、受付となります。

1 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして、
国土交通省令で定める基準に適合する者であること

(…中略…)
1-2 適切な社会保険に加入していること
2 専任の技術者がいること(資格・実務経験等を有する技術者の配置)
3 財産的基礎・金銭的信用を有すること(財産的要件)
4 欠格要件等に該当しないこと
5 建設業の営業を行う事務所を有すること

この財産的要件の具体的な内容について、法令や、大阪府作成の建設業許可の手引き(以下「手引き」)と、国作成の建設業許可事務ガイドライン(以下「ガイドライン」)では、以下のように記載されています。

建設業法より一部抜粋
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一~三 (略)
四 請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

手引きより一部抜粋
P2-27
一般建設業における財産的基礎、金銭的信用
申請者が請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこととし、申請時点において、次のいずれかに該当する者は、倒産することが明白である場合を除き、この基準に適合しているものとして取り扱います。
直前の決算において、自己資本の額が500 万円以上であること。
イ 金融機関の預金残高証明書(残高日が申請日前4週間以内のもの)で、500 万円以上
資金調達能力を証明できること。
ウ 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること。(5年目の更新申請者は、この基準に適合するものとみなします。)


特定建設業における財産的基礎
申請者が発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が8,000 万円以上のものを履行するに足りる財産的基礎を有することとし、原則として、許可申請時の直前の決算期における財務諸表において、次のすべてに該当するものは、倒産することが明白である場合を除き、この基準に適合しているものとして取り扱います。
ア 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
イ 流動比率が75%以上であること。
ウ 資本金の額が2,000 万円以上であること。
エ 自己資本の額が4,000 万円以上であること。


注1【欠損の額】
法人にあっては貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合にその額が資本剰余金、利益
準備金及び任意積立金の合計額を上回る額
をいいます。
(…中略…)
注2【流動比率】流動資産を流動負債で除して得た数値を百分率で表したものをいいます。
注3【資本金】・ 法人にあっては株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額をいいます。
(…中略…)
注4【自己資本】・法人にあっては貸借対照表における純資産の額をいいます。
(…中略…)


資本金の増資による特例
資本金の額について、申請時直前の決算期における財務諸表では、資本金の額に関する基
準を満たさないが、申請日までに増資を行うことによって基準を満たすこととなった場合に
は、資本金の額に関する基準を満たしている
ものとして取り扱います。
この取扱いは資本金に限ったもので、自己資本は財務諸表で基準を満たすことが必要です。

ガイドラインより一部抜粋
P28、29
4.財産的基礎又は金銭的信用について(第4号)
(4)この基準を満たしているかどうかの判断は、原則として既存の企業にあっては申請時の直前の決算期における財務諸表により、新規設立の企業にあっては創業時における財務諸表により、それぞれ行う。
(5)本号の基準に適合するか否かは当該許可を行う際に判断するものであり、許可をした後にこの基準を適合しないこととなっても直ちに当該許可の効力に影響を及ぼすものではない。

ポイントは以下のとおりです。


○一般建設業許可
・5年目の更新申請ではこの要件は満たすものとみなされますので、主に新規申請において求められます。その場合、「直前の決算において、自己資本が500万円以上」又は「預金残高証明書」(500万円以上)が必要です。
・特に預金残高証明書については、「残高日が申請日前4週間以内のもの」とされているので、他の申請書類の用意にめどをつけた後、申請時期を見据えながら最後に用意したほうが無難です。


○特定建設業許可
・一般の許可に比べて、厳しいハードルが課されています。
・既存企業では、「申請時の直前の決算期」の財務諸表を使い、許可後に適合しないことになっても許可の効力に影響はない点に留意する必要があります。一般の許可で5年目の更新申請であれば、財産的基礎要件は満たすものとみなされますが、特定の許可ではそのような規定はないため、更新申請ごとに当該要件を満たす必要があります。
・特定の許可での当該要件(法人の場合)を図でまとめると、以下のようになります。

以上が、財産的基礎要件の概要とその注意点です。少しでも参考になれば幸いです。

もし建設業許可取得をご検討の業者様がおられましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。法律用語は難しいですが、わかりやすい言葉を心がけて対応させていただきます。

ワークルー行政書士・社労士事務所のホームページはこちら