第11回 営業所技術者(一般建設業の専任技術者)って何?

前回は経営業務管理責任者という経営面の責任者の話でしたが、今回は技術面の責任者の話です。技術者は「営業所」と「現場」の両方に必要ですが、そのうち今回は特に一般建設業における「営業所」での技術者の話です。


以前にお話ししたように、「営業所」とは「本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所」のことで、請負契約の見積り、入札、契約締結等を行います。そこで法の目的である「建設工事の適正な施工を確保」するには、技術面での契約内容の精査や現場への適時適切なサポートを行う技術者が不可欠です。
そして令和6年12月施行の法改正により、以下のとおり営業所における技術者の定義づけが行われました。(今回抜粋したのは一般建設業についてです。)

建設業法(一部抜粋)
(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 (略)
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。(…中略…))を専任の者として置く者であること。
(…以下、略)

このように、営業所技術者には「専任」性が求められています。そのため、一般的には「専任技術者」という用語が用いられます。
この「専任」について、大阪府作成の「建設業許可の手引き」(以下、「手引き」)には、以下のような注意点が挙げられています。

手引き2-21より抜粋
注2【次に掲げるような者は、原則として「専任のもの」とはいえないものとして取り扱います。】
住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
他の営業所(他の建設業者の営業所を含みます。)において専任を要する者
(…以下、略)


注3【同一の営業所内の同業種】
専任技術者は、同一の営業所内において、各業種につき、それぞれ1 名ずつ担当することとなり、複数の専任技術者が同じ業種を担当することはできませんので、ご注意下さい。


注9【常勤役員等(経営業務の管理責任者)との兼任】
一般建設業はア~クまで、特定建設業はケ~ソまでの、いずれかに該当する者が経営業務の管理責任者としての基準を満たしている場合には、同一の営業所(原則として本社又は本店等)内に限って当該常勤役員等(経営業務の管理責任者)を兼ねることができるものとします。


注1 0 【その他】
(…中略…)したがって、二以上の建設業について許可を行う場合において、一つの建設業につき1 人の専任技術者を求めているのではなく、複数の業種を1人の専任技術者が担当することが可能です。ただし、二以上の建設業について実務の経験を要する場合、それぞれ異なる期間であることが必要です。経験期間が重複しているものにあっては二重に計算しません。

特に、経営業務管理責任者との兼任は同一の営業所内に限られるという点は、一人親方のケース等で関係する場合があるので注意が必要です。

そして、「専任」性のほかに、もう一つの要件として技術の専門性(資格や実務経験など)については、以下のとおり定められています。

建設業法第7条第2号(一部抜粋)
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。(…中略…))を専任の者として置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法による高等学校(…中略…)を卒業した後五年以上又は同法による大学(…中略…)を卒業した(…中略…)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

大まかにまとめると、イは「高卒(指定学科)+5年実務経験」又は「大卒(指定学科)+3年実務経験」、ロは「10年実務経験」、ハは国家資格などです。
まずイについて、例えば機械器具設置工事業の指定学科は、以下のとおり法令で定められています。

建設業法施行規則(一部抜粋)
(国土交通省令で定める学科)
第一条 建設業法(以下「法」という。)第七条第二号イに規定する学科は、次の表の上欄に掲げる許可(…中略…)を受けようとする建設業に応じて同表の下欄に掲げる学科とする。
(…中略…)
(上欄)機械器具設置工事業 消防施設工事業
(下欄)建築学、機械工学又は電気工学に関する学科
(…以下、略)

また、実務経験については、大阪府の手引きには以下の記載があります。

手引き2-21、22より抜粋
注5【実務の経験】
「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、ただ単に建設工事の雑務のみの経験年数は含まれませんが、建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱うものとします。
(…中略)
なお、電気工事及び消防施設工事については、それぞれ電気工事士法、消防法等により電気工事士免状及び消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ、一定の工事に直接従事できません。また、建設リサイクル法施行後の解体工事の経験は、土木工事業、建築工事業、とび・土工工事業若しくは解体工事業許可又は建設リサイクル法に基づく解体工事業登録で請け負ったもの(※)に限り経験期間に算入されます。(※)許可通知書等又は解体登録通知書等を提示してください。

このように、すべてが実務経験として認められるわけではないので注意が必要です。

そして、ハについて、従来は国家資格のみでしたが、令和5年7月施行の法改正により要件が緩和され、8業種(後述)を除き、検定試験の合格者は合格種別に応じて実務経験を短縮できるようになりました。(指定学科卒業者と同様)
例えば、機械器具設置工事業については、法令に以下のとおり定められています。

建設業法施行(一部抜粋)
(法第七条第二号ハの知識及び技術又は技能を有するものと認められる者)
第七条の三 法第七条第二号ハの規定により、同号イ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものとして国土交通大臣が認定する者は、次に掲げる者とする。
一 (略)
二 前号に掲げる者のほか、次の表の上欄に掲げる許可を受けようとする建設業の種類に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる者
(…中略)
(上欄)機械器具設置工事業
(下欄)
一 技術検定のうち建築施工管理、電気工事施工管理又は管工事施工管理に係る一級の第一次検定又は第二次検定に合格した後機械器具設置工事に関し三年以上実務の経験を有する者
二 技術検定のうち建築施工管理、電気工事施工管理又は管工事施工管理に係る二級の第一次検定又は第二次検定に合格した後機械器具設置工事に関し五年以上実務の経験を有する者
三 技術士法第四条第一項の規定による第二次試験のうち技術部門を機械部門又は総合技術監理部門(選択科目を機械部門に係るものとするものに限る。)とするものに合格した者

つまり、従来は国家資格である技術士(一定部門)の第二次試験合格者に限られていましたが、緩和により、技術検定のうち建築施工管理の一級合格者は大卒(指定学科)と同様に3年以上、二級合格者は高卒(指定学科)と同様に5年以上の実務経験があればよいということです。


ただし、指定建設業の工事業(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園)と電気通信工事業の合計8業種については施行規則の該当箇所に緩和に関する定めがなく、検定合格による実務経験短縮の対象外ですので、注意が必要です。

以上が、「営業所技術者(一般建設業の専任技術者)」の要件とその注意点です。少しでも参考になれば幸いです。

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