第16回 主任(監理)技術者と(特定)営業所技術者は兼務できるの?

主任(監理)技術者は「現場」の技術者ですが、(特定)営業所技術者は「営業所」の技術者です。
営業所技術者等は、「営業所」に所属して、技術面での請負契約内容の精査や現場への適時適切なサポートを行う技術者のことで、原則専任が求められます。

そのため、「現場」の主任技術者等とは求められる役割が異なり、主任技術者等との兼務は原則できないですが、例外として兼務できる場合があります。
大きく分けると、国通知による特例と法26条の5による特例の2つがあります。

まず、国通知による特例について解説します。 これは、「主任(監理)技術者の専任不要」かつ「工事現場と営業所が近接」の場合に活用できるもので、イメージ図は以下のとおりです。

具体的には、以下のとおりです。

国土交通省作成の監理技術者制度運用マニュアル(以下「運用マニュアル」)より抜粋
二―二 P6(5)
② 2)主任技術者又は監理技術者を専任で配置する必要がない建設工事(営業所と工事現場が近接している場合)(平成十五年四月二十一日付国総建第十八号)。
以下の全てを満たすことが必要。
営業所技術者等が置かれている営業所において請負契約が締結された建設工事であること。
イ 工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に工事現場と営業所が近接していること。
当該営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあること。
営業所技術者等が所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること。

二―四 P9
(2)直接的な雇用関係の考え方
① 直接的な雇用関係とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在することをいい、在籍出向者や派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえない。
(…中略…)
(3)恒常的な雇用関係の考え方
① 恒常的な雇用関係とは、一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていることに加え、監理技術者等と所属建設業者が双方の持つ技術力を熟知し、建設業者が責任を持って技術者を工事現場に設置できるとともに、建設業者が組織として有する技術力を、技術者が十分かつ円滑に活用して工事の管理等の業務を行うことができることが必要であり、特に国、地方公共団体及び公共法人等(…中略…)が発注する建設工事(以下「公共工事」という。)において、元請の専任の主任技術者、専任の監理技術者、専任特例の場合の監理技術者及び監理技術者補佐については、所属建設業者から入札の申込のあった日(指名競争に付す場合であって入札の申込を伴わないものにあっては入札の執行日、随意契約による場合にあっては見積書の提出のあった日)以前に三ヶ月以上の雇用関係にあることが必要である。
(…以下、略)

このように、近接の要件のほかに、「営業所技術者等が置かれている営業所において請負契約が締結された建設工事であること」や、営業所技術者等に「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要です。

つまり、営業所技術者がいない他の営業所での請負契約にかかる建設工事は兼務の対象外です。また、在籍出向者や派遣社員については原則不可で、公共工事は入札申込日等以前に3か月以上の雇用関係が必要ということです。

次に、法26条の5による特例について解説します。これは令和6年12月施行の法改正で新設されました。

イメージ図は以下のとおりです。

具体的には、法令等で以下のとおり定められています。

建設業法第26条の5
(営業所技術者等に関する主任技術者又は監理技術者の職務の特例)
第二十六条の五 建設業者は、第二十六条第三項本文に規定する建設工事が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、第七条(第二号に係る部分に限る。)又は第十五条(第二号に係る部分に限る。)及び同項本文の規定にかかわらず、その営業所の営業所技術者又は特定営業所技術者について、営業所技術者にあつては第二十六条第一項の規定により当該工事現場に置かなければならない主任技術者の職務を、特定営業所技術者にあつては当該主任技術者又は同条第二項の規定により当該工事現場に置かなければならない監理技術者の職務を兼ねて行わせることができる
一 当該営業所において締結した請負契約に係る建設工事であること。
二 当該建設工事の請負代金の額が政令で定める金額未満となるものであること。
三 当該営業所と当該建設工事の工事現場との間の移動時間又は連絡方法その他の当該営業所の業務体制及び当該工事現場の施工体制の確保のために必要な事項に関し国土交通省令で定める要件に適合するものであること。
四 営業所技術者又は特定営業所技術者が当該営業所及び当該建設工事の工事現場の状況の確認その他の当該営業所における建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理に係る職務並びに当該工事現場に係る前条第一項に規定する職務(次項において「営業所職務等」という。)を情報通信技術を利用する方法により行うため必要な措置として国土交通省令で定めるものが講じられるものであること。
2 前項の規定は、同項の工事現場の数が、営業所技術者又は特定営業所技術者が当該工事現場に係る主任技術者又は監理技術者の職務を兼ねて行つたとしても営業所職務等の適切な遂行に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない
3、4 (略)

建設業法施行令
(法第二十六条の五第一項第二号の金額)
第三十三条 法第二十六条の五第一項第二号の政令で定める金額は、一億円とする。ただし、当該建設工事が建築一式工事である場合においては、二億円とする。
営業所技術者等が主任技術者又は監理技術者の職務を兼ねることができる工事現場の数
第三十四条 法第二十六条の五第二項の政令で定める数は、一とする。

運用マニュアルP6 ニー二(5)②
1)主任技術者又は監理技術者を専任で配置する必要がある建設工事(法二十六条の五)
以下の全てを満たすことが必要。
ア 営業所技術者等が置かれている営業所において請負契約が締結された建設工事であること。
兼ねる工事現場の数が1以下であること。
三(監理技術者等の専任)(2)①1)~7)を満たしていること。なお、三(2)①2)について、「当該工事現場と他の工事現場」とあるのは、「営業所から当該工事現場」と読み替え、三(2)①6)ロについては、所属する営業所の名称を加え、三(2)①6)ニ(イ)については、当該建設工事に係る契約を締結した営業所の名称を加える等が必要のため留意が必要である。
エ 営業所技術者等が所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること。
2)(略)
3)主任技術者又は監理技術者を専任で配置する必要がない建設工事( 2)の場合以外)
1)の要件を全て満たすこと(三(2)①1)は除く)。

おおまかにまとめると、請負金額1億円(建築一式工事は2億円)未満の建設工事について、一定の要件を満たせば、1つの工事現場まで兼任が可能ということです。
「営業所技術者等が置かれている営業所において請負契約が締結された建設工事であること」や「直接的かつ恒常的な雇用関係にあること」などの要件は、先ほどの国通知による特例と概ね同じです。


また、そのほかの要件については、前回とりあげた専任特例1号(2つの工事を同一の主任技術者等が兼務できる場合)と共通する部分が多いですが、人員の配置を示す計画書において、一部読み替えが必要な部分があります。
図示すると、以下のとおりです。

以上が、例外的に主任(監理)技術者と(特定)営業所技術者が兼務可能な場合の概要とその注意点です。少しでも参考になれば幸いです。

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